『水族館との出会い』


子供の頃、海のそばに住んでいた私は、よく自転車で近くの海岸まで出掛けていました。
好きな場所というか、とても気になる・・・、いえ一番近い言葉はたぶん「心ひかれる」です。
そんな子供心にも不思議な魅力を持った場所は、廃墟になった『水族館』でした。
『水族館』と言うにはあまりにも小規模だった建物は、旅館街を見上げる海岸線にあったと
記憶します。
すでに朽ちて天井は無く、入り口だった所から中にはいると、コンクリ−トと
石で組み合わされた土埃だらけの、もと水槽が点在していました。
中を覗き込むと、割れたガラスの中には作り物の海草のようなものが貼り付き、
色を塗られた珊瑚の飾り物がひときは目をひくのでした。
海のそばなのに、どこか湿っぽいのに、抱える水を失った水族館は、
ともすると砂漠のような乾きを感じさせます。
悪戯盛りの子供がその場所にある何一つにも手を触れず、だだ眺めて
いただけなのは、見てはいけない物、居ては行けない場所にいるような
罪悪感があったからかもしれません。
もともと人間が住めないところ、見られないところを見ているのだから、
水族館にチョッピリ罪悪感はあっても不思議じゃないのかもしれません。
そんなどこか怪しげで心ひかれる空間がジュディ−の水族館の始まりです。
水のない水族館で、そのうえもと水族館だった廃墟が水族館好きになった
ル−ツなんておかしな話かもしれません。
でも、水族館から何を得るのか、それは受け取る側が選ぶことです。
魚の名前を覚えたりするだけが水族館じゃないことは、皆さんご存じのとおりです。
水族館の可能性は、人間がエラ呼吸を思い出さない限り、
たぶん無限大にあると思います。