『水族館ランキング』


『日経トレンディー』7月号「水族館・動物園ランキング」はとても面白かったです。
久々に自分以外の人は水族館に何を求めてるのかな?って
考える事が出来ました。

コレが最高というラインがあり、みんながそれをクリアするような水族館を作ったら、
考えるだけでも悪酔いしそうです。
とりあえず、ベンチマーク的ランキングを真に受け、
自館のアイデンティティを無視して改革を試みるような
アホな水族館はない!・・・と思いたいです。

元来、水族館に「こうあらねばならない」という指針の必要性は無く、
アミューズメント重視でも、博物館であり学習施設であっても、
何だってかまわないのです。
水族館に自分は何を求めに行くのか、何をしたいのかを踏まえて訪れると、
おのずと自分にあった水族館に出会えるはず。
すぐれた感性を求められているのは水族館の方ではなく、
それを利用する我々の方なのだと思います。

私も、ランキングにあった水族館を全て知っているわけではないので、
知っている水族館に下された評価だけで、ふ〜ん…とか思っているわけです。
それはもうイロイロ感じるところはありました。
「規模がでかくなければ水族館じゃないのか!」とか、
「順路はあってしかるべしと言う考え方なんだ」とか、
なのに「一日中居られないと点が低いのね・・・」とか、
「水族館はショーをしなければならないの?」とか、
「ほんまに鳥羽水族館のレストランのサービスが充実してると思ってるの?」とか。
ちなみにランキングでは15位なのに、食事を楽しむという部分は高得点?
逆じゃないの?私もよく行く水族館だし、食事もここで済ませる事が多いですが、
未だかつてウエイトレスさんの笑顔を見たことがありません。
良い水族館にのに惜しい…と思っていたぐらいなのに。

…とまあ細かいことはこれぐらいにして、
ランキングという事で私が感じた事を少々書いてみましたので、
よろしければお読み下さい。

とりあえず・・・・・。
人の好きには個性がある。
水族館にも個性がある。
だから第一位の水族館であっても、あなたの一番だとは限らない。
・・・・・って事で。
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水族館には旬がある。
たとえばオープンしたての水族館などは一番旬かもしれない。
確かに施設的には最高かもしれない。
しかし、引っ越してきたばかりの水槽の中には、まだ生き物たちの日々の営みはない。
環境水槽などと謳い文句にしてそれなりの環境を再現できていたとしても、
生き物たちがそこでイキイキと暮らしている姿を見るのには、
やはり少し時間が必要である。
きらめく碧い水の中に舞う色とりどりの魚、その姿に感動したり癒されたり・・・。
しかし、宝石箱に入った宝石を眺めるのではなく生き物を見たいのであれば、
おのずと旬の意味がわかっていただけると思う。

さて、第一位を獲得した美ら海水族館。
もちろん私自身も、この第一位には何の異存もない。
あの大水槽を目の当たりにして感嘆の声をあげ、その声が天井高くこだまする
感動的な開放感は他の追随を許さない。
が、それとはまったく関係のないところでふと思ったことがある。
それを選んだ2種類の被験者グループ。
『カップル』と『ファミリー』
ファミリーといえどいろいろだが、ようするにはお子様連れという事で納得がいく。
問題なのは『カップル』の方である。
夫婦でもカップルだし友達でもカップル。
しかし、デートという想定らしいので、それなりのカップル。
夫婦だとつまらないと嫌われるとか、盛り上がらないなんて今更心配はない。
だとすると俗に言う「友達以上、夫婦未満」が対象アンケート回答者だろう。
ココで思い出して欲しいのは、他の水族館は全て多少のへんぴさはあっても、
車でデートは当たり前なので、フラリとデートで立ち寄ることの出来る
水族館だと言うこと。
唯一、第一位の美ら海水族館だけは車でフラリどころか、お泊まり上等!の
カップルでなければ無理である。
県内の人以外、旅行でしか行けない水族館。
お泊まり旅行が出来るカップルという限られた制約があるにもかかわらず
1位に輝いてしまう美ら海水族館!この底力は賞賛に値するのでは?
・・・と言ってはみたものの、お泊まりデートで行った所なんて、
ナニ見ても最高に見えた可能性は確かに捨てきれない・・・・かな?(^^;)

一番最初にに述べたように、水族館にも個性がある。
なのでランキングじたいいかがなものかとは思うが、
芸能人人気ランキングなるもで人間にランクをつけるぐらいだから、
水族館にランク付けをしたってなんら不思議ではない。
しかし、テレビや雑誌という向こうから一方的に与えられた情報だけで
判断したわけではなく、水族館のランキングは
自分で水族館に行った上で下した判断。
ようするに実際付き合ってみて、好き嫌いを判断した結果である。
恋人とデートに行く場合、水族館ともデートしていると思って
自分の感性に合う水族館を選んで下さい。
くれぐれもランキングで書かれた評価を鵜呑みにして
判断を下さないようにしていただきたい。

ランキングとはランク付けつけるということだが、ぶっちゃけ
自分が良いと思っている水族館をどれくらいの人が良いと思っているのかがわかる。
自分の感性をどれくらいの人と分かち合えるのかを知る機会と言っていい。
・・・でも、それってやっばり優れているとかじゃなく
好き嫌いよね。(^_^;)

ランキングを見ていると、子供はアミューズメントパーク要素が必要という
とらえかたをしているようだ。
でも実際水族館に行くと、生き物を飽きることなく見続けているのは
子供で、動かないから面白くないという大人をよく見かけます。


私は、水族館はけしてアミューズメントパークである必要はない、と思っている。
しかし、学習施設だと思っているわけでもない。
学習ではなく、感性を育てる施設だと思っている。
魚の名前を知っているからといって我々一般人には何になるだろう?
それぞれの生き物が、進化淘汰してきた姿に人間の都合や物語性を持ち込まず、
ありのままの彼らを見ることが出来たなら、
それは人の感性を一番揺さぶる光景だと思う。
人間しか知らない人間よりも、千差万別の生き物の都合の中で
暮らしている事を知っている人間の方が、
自分自身もうまく受け入れて生きていけるような気がする。
人間以外の生き物がいる場所は必要である。
そうして野生に人が立ち入る労力と危険性を踏まえた上で、
私達は水族館や動物園というものを作り上げた。
人以外の生き物がこの地球で生きている事を見るために。
それこそ人間の都合なのだが、
この地球で生きているのは我々だけではないということを知るため、
私達は水族館に行く。
何にしても水族館は水族館であって、以上でも以下でも無い。